マーケティングリサーチや市場分析において、自社の課題解決に直結する情報源として重要なのが「一次データ」です。しかし、どのような手法を用いて収集すべきかか迷うケースも少なくありません。
本記事では、一次データの定義や二次データとの違い、代表的な収集方法、そして自社で独自調査を行うメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
一次データと二次データとの違い
一次データの定義
一次データとは、自社が抱える特定の課題や目的を解決するために、新しく独自に収集・作成したデータを指します。アンケート調査やインタビュー調査などを通じて得られたデータ・情報がこれに該当します。調査の企画から実施までを自社(または委託先の調査会社)でコントロールするため、目的に対して極めて関連性の高い情報が得られると考えられます。
二次データとの違い
二次データとは、官公庁が発表している統計データ(国勢調査など)や、他社が公開している市場調査レポート、学術論文など、すでに誰かが別の目的で収集・公開しているデータのことです。
一次データは、自ら新規で収集するデータ、二次データは、すでに収集・公開されている既存のデータとなります。

一次データの代表的な収集方法
Webアンケート調査
インターネットを介して実施されるアンケート調査の形式。
オンラインプラットフォームを使用し、調査フォームを配信し回答を収集する。
・素早く多くのデータを収集できる。
・地理的制約がなく、広範な対象者からの意見を集めることができる。
・低予算での実施が可能
・リアルタイムで結果を分析できる
・バイアスに注意回答の質が低くなり、誤回答や無回答が増えることがある。
・匿名性が高いため、回答の信憑性が低くなる場合がある。
・特定の層に偏ることがあり、代表性のあるデータを得るのが難しいことがある。
会場調査
特定の場所に集まった対象者に対して、直接的に製品を使用してもらったり広告を視聴してもらいデータを集める手法。主に会議室や調査専用施設などで実施される。
・対象者のリアルタイムな反応や表情を観察できる。
・調査環境を統一することで、外部要因の影響を最小限に抑えられる。
・調査員が直接フォローアップできるため、誤解や誤回答が少なくなる。
・実施場所や時間の制約があり、対象者の参加が限定される。
・高額なコストがかかる場合が多い。
・対象者が会場に来る手間がかかり、参加率が低くなることがある。
ホームユーステスト(HUT)
製品を対象者の自宅に送付し、一定期間使用してもらった後にフィードバックを収集する調査形式。
・対象者が日常生活の中で製品を使用するため、実際の使用状況に即したデータが得られる。
・使用期間が長いため、長期的な評価や持続性に関する情報が収集できる。
・対象者がリラックスした環境で評価を行うため、自然な反応が得られる。
・調査期間が長くなるため、結果が出るまでに時間がかかる。
・製品の配送や回収にコストがかかる。
・対象者の誤使用や不注意によるデータの信頼性低下が起こる可能性がある。
郵送調査
調査票を対象者に郵送し、記入後に返送してもらう調査形式。
・地理的に広範な対象者からデータを収集できる。
・低コストで大規模な調査を実施できる。
・対象者が自分のペースで回答できるため、詳細な意見を得やすい。
・回答率が低くなることが多い。
・回答が返送されるまでに時間がかかるため、結果が出るのが遅れる。
・質問の理解に誤解が生じる可能性があり、フォローアップが難しい。
デプスインタビュー
対象者と一対一で行う詳細なインタビュー形式。個人の深い意見や感情を引き出すことを目的としています。
・個々の意見や感情を詳細に把握できる。
・質問の柔軟な調整が可能で、新たな洞察が得られる。
・信頼関係を築きやすく、率直な意見が得られる。
・実施に時間とコストがかかる。
・分析が難しく、専門的なスキルが必要。
・少数の対象者からのデータであるため、一般化が難しい。
グループインタビュー
複数の対象者を一度に集めて行うインタビュー形式。フォーカスグループとも呼ばれ、ディスカッションを通じて意見を収集します。
・多様な意見を一度に収集できる。
・参加者同士の意見交換で新しい視点が得られる。
・短時間で多くのデータを収集できる。
・グループの影響で個々の意見が抑制されることがある。
・ディスカッションの流れを管理するのが難しい。
・一部の参加者の意見に偏る可能性がある。
有識者インタビュー
特定の分野の専門家や有識者に対して行うインタビュー形式。専門的な知識や見解を収集することが目的です。
・高度な専門知識や見解が得られる。
・信頼性の高い情報を収集できる。
・新たな視点や洞察を得られる可能性が高い。
・有識者のスケジュール調整が難しいことがある。
・専門用語や技術的な内容が多く、理解が難しい場合がある。
・特定の有識者の意見に依存するリスクがある。
エスノグラフィー
対象者の生活環境や文化を観察し、深い理解を得るためのフィールド調査。長期間にわたる観察やインタビューを行います。
・対象者の実生活や文化的背景を深く理解できる。
・自然な環境での行動を観察できる。
・文脈に基づいた詳細な情報を収集できる。
・調査に時間とコストがかかる。
・調査者の主観が結果に影響しやすい。
・データの分析が複雑で、専門的なスキルが必要。
一次データを収集するメリット
時間や手間をかけてでも、自社で一次データを収集することには大きなメリットがあります。
自社の目的に合致した独自性の高い情報が得られる
最大のメリットは、自社の課題にピンポイントで答える情報が得られる点です。 二次データはあくまで汎用的な情報であるため、「自社の新機能に対する評価」や「自社ブランドの認知度」といったニッチな情報は得られません。一次データを収集することで、競合他社が持っていない独自の情報資産を獲得でき、マーケティング戦略における競合優位性の構築に寄与すると考えられます。
情報の正確性・信頼性を担保しやすい
一次データは、対象者の条件設定から質問内容、集計方法に至るまで、自社でプロセスを完全に管理できます。 そのため「いつ、誰に、どのような方法で聞いた結果なのか」が明確であり、データに対する信頼性や透明性を高く保つことが可能です。
一次データを収集する際のデメリット・注意点
一方で、一次データの収集にはいくつかのハードルも存在します。実施前に以下の点に留意する必要があります。
調査にコストと時間がかかる
既存のデータを検索するだけの二次データ収集とは異なり、一次データの収集には調査の企画・設計、対象者のリクルーティング、実査、集計・分析といった多くの工程が発生します。そのため、金銭的なコストと相応の期間が必要となります。
適切な調査設計を行うためのノウハウが必要となる
価値のある一次データを得るためには、調査の目的に沿った適切な設計が不可欠です。 質問の順番や言い回しが不適切だと、回答にバイアス(偏り)が生じ、正確なデータが取れなくなるリスクがあると推測されます。自社にリサーチの知見が不足している場合は、専門の調査会社やリサーチツールの活用を検討することが望ましいと言えます。
まとめ:目的に応じた適切な収集方法の選択を
一次データは、自社のマーケティング課題を解決するための強力な武器となります。 まずは自社が「何を知りたいのか」という目的を明確にし、定量的なアンケート調査が適しているのか、定性的なインタビュー調査が適しているのか、最適な収集方法を選択することが重要です。二次データと一次データを賢く組み合わせ、データに基づいた精度の高い意思決定を行える環境を整えていくことが求められます。
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